飲みニケーションの時代から飲まないコミュニケーションの時代へ

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1. はじめに

 厚生労働省のガイドラインと世界保健機関(WHO)の見解によれば、アルコール摂取は健康リスクを伴い、「安全な飲酒量はない」とされました。WHOのレポートでは、アルコールが毎年世界で約300万人の死亡に関与しているとされ、その影響は非常に大きいです。特に飲酒はがんや心臓病など多くの疾病のリスクを高めるため、飲酒しないことが最善の選択とされています。

2. WHOが警告するアルコールのリスク

 世界保健機関(WHO)は、アルコール摂取に関して「安全な飲酒量はない」という立場を取っています。アルコールは約200種類以上の疾病や傷害の原因となり、毎年300万人以上がアルコール関連の原因で死亡しています。がん、心臓病、肝疾患など、さまざまな健康リスクが指摘されています。例えば、アルコールは7種類のがん(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、女性の乳がん)の発症リスクを大幅に増加させることが確認されています。2018年の研究では、毎日1杯のアルコール摂取でもがんリスクが増加することが示されています。このため、WHOは飲酒による健康被害を最小限に抑えるためには「飲まないこと」が最善であり、飲酒する場合でも「少なければ少ないほど良い」としています。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol-summaries/a-01
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231122/k10014265721000.html
https://www.asahi.com/articles/ASS2S3SH6S2STIPE003.html
https://www.ask.or.jp/article/11687

3. 厚生労働省の飲酒ガイドライン(飲酒0が望ましい)

 厚生労働省の飲酒ガイドラインは、健康リスクを最小限に抑えるための具体的な指針を示しています。「飲酒の0123」というスローガンは、次の内容を意味します:

  • 20歳未満と妊婦は飲酒しないこと
  • 週に1日以上の休肝日を設けること
  • 1日の純アルコール摂取量を男性20g、女性10g以下に抑えること
  • 多量飲酒(1日60g超)はしないこと

 これらのガイドラインは、日本国内でのアルコール関連疾患の予防を目的としており、WHOの見解とも一致しています。例えば、2019年のデータによると、日本における肝疾患関連の死亡者数は年間約33,000人であり、アルコール摂取がこれに大きく寄与しています。

4. 「百薬の長」の再考

 「酒は百薬の長」という言葉は古くから信じられてきましたが、現代の医学研究によりその考えは覆されつつあります。1981年に発表された「Jカーブ効果」の研究では、適度な飲酒が総死亡率を低下させる可能性が示唆されましたが、最新の研究ではこれが否定されています。2018年に発表された『LANCET』誌の研究では、「アルコール摂取量がゼロであることが最も健康的である」と結論付けられました。これにより、「百薬の長」という言葉が持つ意味は現代では通用しないとされています。

https://www.vill.oshino.lg.jp/site/kosodate/1947.html
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/120300068/
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/tyojyu-osake.html
https://www.asahi.com/articles/ASS6P0P0XS6PUPQJ00TM.html

5. アルコールが健康に与える影響

 アルコールの過剰摂取は、肝臓病、すい臓病、循環器疾患など、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。特に肝臓はアルコールの代謝に大きな負担を受けるため、アルコール性肝炎や肝硬変へと進行するリスクが高まります。例えば、日本では年間約10,000人がアルコール関連の肝硬変で死亡しています。また、飲酒は大腸がんのリスクを高めることが研究で示されており、1日当たり20g以上のアルコール摂取を続けることで、がん発症リスクが20%以上増加するとの報告もあります。これらのリスクは、個人の体質や生活習慣によって異なりますが、特に若年者や女性では、少量の飲酒でも大きな影響を受ける可能性があります。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol-summaries/a-01
https://www.asahi.com/articles/ASS2S3SH6S2STIPE003.html

6. 飲酒の社会的影響

 過度の飲酒は、健康問題だけでなく、社会的にも深刻な影響を及ぼします。例えば、飲酒による職場での生産性低下は、経済的損失としても大きな問題です。日本では、飲酒に関連する労働損失は年間約3兆円と試算されています。また、飲酒は交通事故の主要な原因の一つであり、2023年には約2,346件の飲酒運転事故が発生しました。この他、飲酒は暴力行為や家庭内トラブルの引き金ともなり、社会全体において多大な負の影響を及ぼしています。

https://www.ask.or.jp/article/11687
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html

7. 飲酒運転事故の実態

 飲酒運転は、日本における深刻な社会問題の一つです。警察庁の統計によると、2023年の飲酒運転による交通事故件数は前年に比べて8.3%増加し、特に20代から30代の若年層による事故が目立ちます。飲酒運転による事故では、2023年に112件の死亡事故が発生し、これは全交通事故死亡者数の約5%を占めています。これらの事故は、地域別に見ると沖縄県や青森県などで特に多く発生しており、これらの地域での飲酒運転防止対策が急務となっています。

https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
https://www.j-arukanren.com/file/3.pdf
https://www.sonpo.or.jp/about/useful/insyu/kenbetsu.html

8. 禁酒時代の到来

 禁煙政策の成功を受けて、アルコールに対する規制強化の動きが進んでいます。たばこ同様、アルコールも健康被害や社会問題の原因と認識されつつあり、将来的にはアルコールに対する規制が強化される可能性があります。例えば、スウェーデンやノルウェーでは、アルコール販売に対する厳しい規制が実施され、消費量の削減に成功しています。日本でも健康意識の高まりにより、将来的には類似の規制が導入される可能性があります。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1d549cf0f77ac8864480cab2a13b303e5e5f7be0
https://www.sonpo.or.jp/about/useful/insyu/kenbetsu.html
https://x.com/kazu_fujisawa/status/1126355172505018368

9. アルコールとコミュニケーション

 アルコールは長年、ビジネスや社交の場でコミュニケーションを円滑にする手段として利用されてきました。例えば、「飲みニケーション」と呼ばれる日本特有の文化は、お酒を通じて上司と部下の距離を縮める手段として広く用いられてきました。しかし、調査によると、約30%以上の若年層が「飲みニケーション」に対して否定的な意見を持っており、この文化が若い世代には必ずしも受け入れられていないことが明らかになっています。近年では、ランチミーティングやオフサイトミーティングなど、アルコールを伴わないコミュニケーションの場が増えています。

https://product-senses.mazrica.com/senseslab/tips/nominication
https://wpb.shueisha.co.jp/news/lifestyle/2015/10/08/54678/
https://www.asahi.com/articles/ASR773DZ0R76UTFL00T.html
https://www.leon.jp/lifestyle/102279
https://www.jma2-jp.org/article/jma/k2/categories/775-mh210605

10. ノンアルコール会食の魅力

 アルコール離れの傾向が進む中、お酒を飲まない会食やイベントが注目を集めています。例えば、「ソバーキュリアス」というライフスタイルを選ぶ人々が増加しており、特に20代から30代の若年層に人気です。飲食店でもノンアルコールドリンクのラインナップが充実しており、果実感のあるドリンクやアレンジティーが人気を集めています。また、「ノンアルパーティー」という新しい宴会スタイルも提案されており、アルコールを使わないことで費用面や健康面でのメリットが期待されています。

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11. まとめと今後の展望

 アルコールに対する健康リスクや社会的影響が広く認識されるようになり、飲酒に対する考え方も大きく変化しています。飲みニケーションから飲まないコミュニケーションへの転換が進む中、今後はより健康的で包括的なコミュニケーション文化が求められるでしょう。例えば、企業や学校でのアルコールフリーのイベントが増加する可能性が高く、これが新たな社会的トレンドとなるでしょう。

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